授業で「フィンランド」をテーマに生徒がプレゼンをしてくれた。
一際目を引いたのは、フィンランド最大手チョコメーカー『Fazer』(ファッツェル)の魅力について力説する少年。
パワポの作り込み、
声量の大きさ、
口から飛び出るつばの量、
一人だけこのプレゼンにかける熱量が違う。
彼は最後に僕の目をじっと見て、言った。
「先生、これを食わずして帰国したら、フィンランドに来た意味がありませんよ」と。
そうか、そこまで言うなら食ってやろうじゃありませんか。
退勤後、近所のスーパーマーケットに駆け込む。
お菓子コーナーの棚を目指して一直線。
近くにいた店員のおばちゃんにいう、
「Fazerのチョコぜーんぶちょうだい!」

おばちゃんが次から次へと、カゴに突っ込む。
ふと値札に目をやって震える。
「チョコレート一枚400円だと!、、、、」
1枚200gとはいえ衝撃の価格だ。
僕の貧乏魂がそろばんをはじく。
“Meiji板チョコレートなら2枚、安売りだったら3枚かぁ、、、”
一度全部ちょうだいといった手前、今更やっぱりいいです、なんて口がさけても言えない。
もし、これでまずかったらFazer少年許さんからな。
全種類詰め込まれたカゴはずっしりと重かった。
バレンタインデーでもこんなに買わない。
会計へ
「40ユーロ(約5600円)になります」
覚悟を決めていた僕に驚きはない。
「クレジットカードで」
僕はスマートにタッチ決済を決め、
宝物のごとく大事にチョコを抱え、家に帰る。
それでは早速いただこう。
期待に胸を膨らませ、いざ実食!
この時、僕は想像すらしていなかった。
後で地獄を見るなんて。
みなさんは人生で「まずいチョコレート」に遭遇したことがあるだろうか?
僕はない。
いや、なかった。この日までは。
結論から述べるとFazerのチョコレート、3枚に1枚のペースで「大ハズレフレーバ」が存在する。
「15枚食べる=5枚の大外れと遭遇する」ことを意味する。
まさに、「チョコレート苦行」である。
ここでは、中でもとびきり記憶に残っている強烈なフレーバーを3つ抜粋して紹介したい。
①「グリーンボール」

今大会1の不審者「グリーンボールフレーバー」。
「あぁ〜、グリーンボール味ね」ってならない。これは一体何味だ?
パッケージにはウィルスみたいな緑の物体。
チョコを割ってみる。中に「緑のまりも」が埋まっとる!
においをクンクン。
チョコの匂いじゃない。トイレの芳香剤をうっすら連想させる化学のにおい。(失礼)
「グリーンボール=抹茶」ではないかと仮説を立てていた自分、
絶望に突き落とされた気分だ。
怖い、食べるのが怖いよ。
恐る恐る、パクリ。
「うわぁ」
情けない声が漏れる。
噛むと歯にくっつく何かがいる。さっきのまりもに違いない。
ゼリービーンズみたいな食感、味は例えるならメロンソーダ?
チョコにメロンソーダ味のグミ、、、、「The海外」って感じ。日本じゃ受け入れられない。
口に残る後味は、ガリガリ君ソーダを連想させました。チョコなのに。
②「りんごヘーゼルナッツ」

冬季限定フレーバー。僕はこの「季節限定」って言葉に懐疑的だ。80%の確率で外れると思っている。
「定番」と「季節限定」って、「サンドウィッチマン」と「ジョイマン」くらい差があると思っている。(ちょっと何言ってるか分かんない)
だから期待していなかった。
「まことにすいまめ〜ん」

はい、真面目にレポします。
香りは意外にもビター。カカオの効いたブラックチョコレートの香り。
一口パクリ。
「!!!!!」
噛んだ時にフニっとした果肉を感じる。(リンゴフレーバーのグミ?)
チョコ自体がビターなのもあり、リンゴの風味が際立つ。甘みとフルーティーさがマッチしている印象。
そして時折、ナッツがボリボリ。
「期待していない」とか言ってごめんな。
想像の3倍美味かったわ。
ただ強いて言えば、若干、リンゴの甘ったるさが後を引く。(作ったリンゴ味)
リンゴフレーバーのお菓子が好きな人にはいいかも。
③「Geisha」

ダークホース「Geisha」
Geishaって芸者だよね。この日本人へのリスペクトが感じられる名前、自然と期待も高まる。
味は「ミルクチョコwithヘーゼルナッツフィリング」
Google先生によると、このフレーバーは1962年から発売されているロングセラー商品だとか。
パッケージも淡いピンク色でチャーミング。
期待と不安を胸にチョコを口に放り込む。
「うぅ、これはうまい、、、」
一人でうなってしまった。
チョコの中にはヘーゼルナッツを砕いたフィリング。ナッツのサクサクとした食感は残しながらも見事にチョコと調和している。
これはいわばナッツとチョコの“合作”だ。
こいつだけは、食べる手を止められず、一列分、一気に食べきってしまった。
ロングセラーにはそれだけの理由がある。
(全15種類のレビュー&ランキングが見たい人はこちらから。
僕が魂を削りながらチョコと格闘している様子が見られます。)
というわけで、なんとか15種類涙を流しながら完食したわけだが、
僕がこの経験から学んだこと。
「Simple is best」「定番 is best」
僕は「お金」と「己の健康」を生贄に、自明の理を召喚したのだった、、、
チョコレート苦行の翌日、Fazer少年を見つけた僕は、今世紀1のドヤ顔で、意気揚々と語る。
「先生、昨日全種類食ってさ。結局シンプルなやつが一番うまいことに気づいたよ」
それに対して、少年
「そんなの当たり前じゃん。全部買わなくても、聞いてくれればおすすめのフレーバー教えたのに。」
おいおい、少年、そんなこと言うな。
涙を流しながらチョコを食った僕の努力が報われないじゃないか。
少年のあまりにそっけない態度にシュンとなる。
でも、、、その通りだ。どうして最初から“現地人に聞く”という選択肢がなかったのだろうか。
これからフィンランドにくる予定のみなさん、
どうか、僕の屍を超え、外さない極上のFazerを堪能してください!
さて、残すところ、チョコレート2500g
僕のチョコ苦行は終わりそうにない。
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