クイズ200人の壁「ぼくvs小中学生200人」

エッセイ

フィンランドで働き始めてから、ここまでたくさんの人に出会ってきた。
みんなナイスガイで、優しくて、「出会えてよかったなぁ」と思える人ばかりだ。ただ、一つだけ、文句を言わせてほしい。

「名前が覚えられないんじゃ。」

僕の職場は公立学校。
小学生から中学生まで、全9クラスを担当している。
一クラス20人だとして9×20=180人

歩いていると急に話しかけてくるパリピ集団を加味すると
少なく見積もっても200人分は名前を覚えないといけない。

彼らは楽だ。だって僕1人の名前を覚えるだけでいいのだから。
それに対して僕の暗記量は200人。

1 vs 200
圧倒的不公平

日本語の名前ならまだいい。
漢字から意味が予測できるし、馴染みがある。

でも、フィンランドの名前は
「カロリーナ、ヴィヴィ、 オデッサ」

みたことも聞いたこともない新出語句の連続。
読み方すらわからないものも多い。
こんなの高校の英単語帳に載っていなかったもんね。(当たり前)

時々出くわす
「マックス」「ジョン」そういうシンプルな名前大好きだ。
「覚えやすい名前でありがとう」ってハグしたくなる。

こんなこと言うと「名前に罪はない!覚えろ!」そう主張してくるスパルタ読者もいるかも知れない。

ど正論でぐうの音も出ません。その通りです。

ただ、「フィンランド語」「英語」本来するべき勉強そっちのけで、
200人の名前の暗記を試みる僕に、一カケラの同情をください。

休み時間中、給食中、放課後、
彼らはトコトコと僕の近くに来て、屈託のない笑顔で聞いてくる。

「おはよう! 先生、僕の名前覚えている?」

はい、今日もきました、地獄の名前質問タ〜イム

「ぜんっぜん覚えていませーん。」
と正直に言いたいところだが、

何せこの子たち、期待で目がキラキラしてやがる。
やめてくれ、そんな目で僕を見つめるな。

直感で答えてみる
「君はたしか、ウィリアムだったよね?」

「僕はアレックスだよ、、、、、」

名前を覚えていないことがわかるや否や、
ものすごい落胆の表情で僕を見つめてくる。
胸がキュッと締め付けられる。

ため息をまじりに、
「やれやれ、この日本人は仕方ねぇな、みじんこ並みの暗記力だぜ、また教えてやるか」なんて顔をしてくる輩も一定数いる。

あぁ、僕にとって学校生活最大の障壁は、彼らの名前かもしれない、、、

だから僕は今日も一人、部屋で唱える。

「カロリーナ、ヴィヴィ、 オデッサ」
「カロリーナ、ヴィヴィ、 オデッサ」
「カロリーナ、ヴィヴィ、 オデッサ」

お経のようにリズミカルに唱える。

「カロリーナ、ヴィヴィ、 オデッサ」
「カロリーナ、ヴィヴィ、 オデッサ」
「カロリーナ、ヴィヴィ、 オデッサ」

なんだか、楽しくなってきた。

「カロリーナ、ヴィヴィ、 オデッサ♪」
「カロリーナ、ヴィヴィ、 オデッサ♪」
「カロリーナ、ヴィヴィ、 オデッサ♪」

「ガチャっ!」

部屋のドアが開く。
心配そうな顔をしたホストマザー。
ラッパー気分、ノリノリな僕。

僕は赤面。
なんか、ごめん。
でも、名前覚えるのは諦めん!!

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