ホストマザー伝:最終章「別れ」

エッセイ

最終章「別れ」

ホストマザー伝もいよいよ「最終章」ということで、
ここで衝撃のカミングアウトをさせていただく。

この度、契約期間満了につき、
他のファミリーの元へ移籍することが決まりました。

「え〜〜〜〜〜〜もうホストマザーの変わった話聞けないの〜〜〜!!!」
我がブログ「フィンラン道」の熱烈な読者から不満の声が聞こえてくる(多分、空耳)

だが、別れと出会いは表裏一体。
マザーと僕は、別の道を歩む時が来たようだ。

振り返れば、職場まで、ほぼ毎日マザーに送迎してもらったっけ。
今日が、最後の車移動、最後の二人の時間、、、

車内から見慣れた通勤路を眺めていると、彼女との思い出がフラッシュバックしてくる。

素手で潰した    「ハエ退治」
何もわからなかった 「ミュージカル」
いないふりした   「ハロウィン」
毛根死んだ     「ファッションショー」

それにしても、ろくな思い出ねぇなぁ笑

辛さと幸せが混在した、辛辛辛辛幸辛辛な日々だった(辛さ多めブレンド)

生涯忘れることはないであろう「世にも奇妙な3ヶ月」

刺激過多な日々が終焉を迎えることに、じわじわと寂しさが込み上げてくる。
車の中で一人必死に涙をこらえる。
なんだこの寂しさ、閉園間際のディズニーランドを歩くような感覚。魔法よ、どうか冷めないでくれ。

そんなことを考えていると、ホストマザーが僕の名前を呼ぶ。
もしかして、マザーも少し寂しいのだろうか、、、

マザー「ねぇ、私、最近、ネズミを飼いたいんだよね」

、、、、、、え、それ今言う?

一瞬自分の耳を疑う。
「ネズミを飼いたい」という発言内容のインパクトもさることながら、この別れ直前、最後に話す話題として、会話にネズミが紛れ込んでいるのはいかがなものか。

心の中で実施されていた、しんみりしたパレードは、突如乱入してきたミッキーじゃないマウスの存在によって妨害されてしまった。

でも、、、、僕の顔には笑みが浮かぶ。
きっと、これでいいのだ。これがいいのだ。
マザーは最後の最後までマザーだった。「らしさ」全開、アクセル全開だった。

そうこうしているうちに職場に着く。僕は大荷物を抱え車から降りる。

彼女との日々が僕にとって「初ホストファミリー体験」
出国前、ホストファミリーって「第二の家族」になると信じていた。
別れは、互いに涙を流しながら、熱い抱擁を交わして、感謝を述べ合う、、、そんなロマンチックなものだと信じて疑わなかった。そしてそうすることが僕の夢でもあった。

でも、僕とマザーの関係性からして、どう考えてもそんな展開は望めそうもない。
一体、どんな別れになるんだ?

自分ごとなのに、まるで映画でも眺めているかのような気持ちで
僕は、僕たちの成り行きを見守る。

助手席の窓を開けるマザー。
始まる、始まるぞ、マザーのラストスピーチが!!

彼女は最後にどんな言葉を残してくれるのだろうか。
やはり、胸熱な展開を期待してしまう。

彼女は一瞬何を言おうか悩んだあと、顔をあげ、口を開く。

「Have a nice day~♪」(良い1日を〜♪)

そう告げると彼女は満足げな顔で窓を閉める。
そして、間髪入れずにエンジンをかけ出発するのだった。

「お、お〜〜〜〜い、別れの言葉はなしか?」

ワイルドスピード的な感動の別れを想像していた僕は、あまりの素っ気なさに面食らう。僕はフルスピードで去っていく彼女の車を見送るほかに何もできなかった。

あぁこの破天荒ぶり。最初から最後まで振り回されっぱなしだったなぁ。

僕は突き当たりで左折しようとする彼女のブレーキランプ5回(正しくはウィンカー)を「ア・イ・シ・テ・ル」のサインだと勝手に解釈して、虚しい気持ちを妄想で埋めた。

ずっと心に描く未来予想図は
ほら、思ったとうりに
叶えられない〜♪ (作詞:北国男/作曲:DREAMS COME TRUE)

衝撃の事実が判明した瞬間でした。

マザーよ3ヶ月間、素敵な思い出をありがとう!!

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