ホストマザー伝:第1章「動物愛」

エッセイ

序章

うちのホストマザーは癖がすごい。
どのくらいすごいかというと、「千鳥のクセがスゴいネタグランプリ」に出演できそうなくらい癖がすごい。(知らない人にもすごさ伝われ!)

しかもそれをネタとしてではなく、ナチュラルに行なっているのだから、もはや天才だ。
彼女は今まで出会った誰とも異なる「新人類」
やっぱり世界って広い。

あまりの癖の凄さに、読者から「ホストマザー特集を組んでほしい」と要望が出るほど。

フィンランドから遥か遠く離れた日本で、しかも顔出し無しでファンを作るなんて、うちのホストマザーもなかなかやりおる。

正直、彼女の破天荒ぶりは筆舌に尽くしがたい。そりゃあそうだ、「新人類」なのだから。しかし、だからと言って筆を投げるわけにもいかない。それは僕のブロガーとしてのプライドが許さない。
僕にはマザーの凄さをブログで伝える使命がある!!(謎の使命感)

必死の思いでマザーを文章の枠に召喚してみた。

すると、出てくる、出てくる、
マザーとの面白エピソードが。
僕の指はキーボードに吸い付き、タイピングの手は止まらなくなってしまった。

完成した文章、、、驚異の1万字超え
これなら卒業論文として提出できそうだ。

この超大作を一気にドカンと投稿しても、担当教授以外読んでくれる人はいなそうなため、3回に分けて投稿することに決めた。

どうか、皆様が飽きないでついてきてくださることを願っている。

第1章は「動物愛」編である。お楽しみあれ!

第1章「動物愛」

それは、仕事終わり、帰路での出来事だった。

「キキーーーーーーーーっ」

マザーがどギツイ急ブレーキをかける。
助手席でうつらうつらしていた僕は予想だにしていなかった急停車に頭殴打。

おかげさまで、ぬらりひょん顔負けの特大たんこぶができてしまった。

「事故でも起きたのか!?」

慌てて周囲を確認するも、ここは片田舎、周りには何もない。
急ブレーキをかける意味があったとは思えない。

どこからどう見ても、マザーの自爆である。
(いや、爆撃を受けたのは、僕の頭か。)

この急ブレーキ、「イエローカード級、いや1発退場の「レッドカード級」に悪質である。

「痛って〜〜〜〜!!」

マザーから謝罪の言葉を引き出そうと、たんこぶをなでなでしながら、悶絶の表情を見せる。

もちろん実際に痛かったのだが、叫ぶほどでもなかった。僕は、母親の注目を引きたい幼子のごとく、過剰演技を繰り広げるのだった。

すると、どうだろう。マザーはこちらに一瞥もくれず、ドアを開け、颯爽と外へ飛び出していくではないか。

華麗なるスルーである。

「僕の魂のこもった演技を完全にスルーだと、、、、」

僕はフロントガラスに写った、いかにも「痛そうな演技」をする自分の顔を見て、真に「イタい」のは自分であるという事実を突きつけられる。

唐突に我に返り、真顔になる。

何だかよくわからないけれど、こうしちゃいられない。
僕はマザーの後に続き、外へ飛び出すのだった。

車外に出ると停車位置5m先、車道にしゃがみ込むマザー。
何事かと近づくと、足元にいたのはなんと「ヘビ」

なるほどこれで全て合点がいった。
なぜ、彼女が急ブレーキをかけたのか。
なぜ、私の渾身の演技をスルーしたのか

どうやら、彼女にとっては僕の「たんこぶ・・よりコブ・・ラ(毒蛇)」の方がよっぽど大切だったようだ。

うん、確かに命は大切だ。命の重さに比べたら、僕のたんこぶの痛みなんて大したことない、、、大したこと、、、ない、、、泣

マザーは僕に説明する。
このままではこの子が後続車両に轢き殺されてしまう。
救出してあげたいのだと。

確かに、ヘビのつぶらな瞳を見つめていると、「この子を助けてあげたい!」と母性愛にも似た何かがが膨らんでくる。(母になったことないんですけどね。)

助けてあげよう、今すぐに。
僕は足でヘビを歩道側へ押しやろうと試みる。

と同時に、マザーの悲鳴にも似た叫び声が聞こえる

「ベノム!!!(訳:そいつ毒持ってるよ!!!)」

大慌てで足を引っ込める。遅れて高まる心拍数。
危ない、危ない、、、たんこぶに加え、2度目の致命傷を負うところだった。

聞くところによると、こいつは毒蛇。しかも猛毒。

マザー曰く、一噛みでのたうち回るほどの激痛が、、、最悪の場合死んでしまうのだとか。

九死に一生を得るとは、まさにこのことである。

マザーの叫び声「ベノム(毒)!!!」が頭にこびりついて離れない。唐突に目の前に飛び出してきた「死」の存在。身体が緊張で強張る。僕はヘビ救出作戦、途中棄権することを決意。

「男のくせに情けない!」やじが飛んできそうだが、なんとでもいってくれ。ちんけなプライドなんてくれてやる。

「背に腹はかえられぬ」、、、ならぬ「蛇に命はあげられぬ」である。

しかし、マザーはうろたえない。
道端に転がっている小枝を拾い、毒ヘビ救出作戦に躍り出る。
その棒切れの頼りなさといったら、、、
「小枝」と言うより、「藁」と呼んだ方が適切かもしれない。

今にも折れそうな藁でヘビをツンツンし始める。

マザーは半笑いで僕にいう。
「私こいつに一回噛まれたことあってさ、もう一回噛まれたらアナフィラキシーで死ぬんだよね笑笑藁」

いや、いごとじゃないから!!!だけに。

僕は悟った。真に危ないのは毒蛇じゃない。

「やべーのむ・・・・しろマザーの方だ。」(立て続けにごめんなさい、どうしてもダジャレ言いたかったんです。)

マザーは藁をヘビの下に潜り込ませ、彼を持ち上げようと試みる。いやいや流石に無理でしょ、その藁じゃ。そんなのミッションインポッシブル

「いいんだなマザー、そのか細い藁に人生を託していいんだな?」
どうやらマザーは藁と心中するつもりのようだ。

「気をつけて!」「もう少し右かな!」「頑張って!」
僕は大声で、あってもなくても変わらないような声援を送り続ける。外野にいる僕はガヤ芸人としての役割に専念する。

彼女は僕の声援など意に介さず、救出活動を黙々と続ける。
そして、ついに、時はきた。
マザーはトムクルーズばりの手際の良さで、ヘビを藁の上に乗っけ、歩道へぶん投げた!!

それはあまりに見事な救出劇だった。
「ミッションコンプリート」である。

マザーは何事もなかったかのように、車内へ向かう。
ヘビに恩を売る様子も、僕にキメ顔をする素振りも見せない。

僕は、そんなハリウッド俳優顔負けのイケメンぶりに心を打たれ、これからもマザーについていく決心をするのだった。

最後に、マザーを讃えて「ポイズンラップ」します。聞いてくれYo!


有毒? 猛毒?
だったら勝手に死んどく?

それはお気の毒
背徳、命に対する冒涜

孤独な蛇見た「マイマザー」
正義に燃える「メイウェザー」

ひと噛みされれば即KO
呼ばねばならぬドクターを

ヘビに搭載、毒毒。
僕は鼓動がドックドク

決して背けぬ道徳心
ヘビに差し伸べる救いの手

「助けはいらん」と振りほどく
とぐろを巻いて半グレる。

それでもめげずに教え説く
マザーの気持ちはついに届く!

Hey, yo!

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